高齢者について訪問理美容師が把握しておくべきこと ①

1. ノーマライゼーションと自立支援

高齢者・障がい者・病を抱える方など、社会的に不利な立場にいる福祉のあり方として、近年ではノーマライゼーションの考え方がほぼ定着しています。 過去は、社会的に不利な立場にいる人々に対しては、地域や一般社会から分離し処遇するという考え方が多く、社会は健常者を中心として成立しているという概念・理解がみられましたが、特別な人間として隔離的に処遇するのではなく、家庭やコミュニティで普通の生活を送れるように健常者が支援する正常社会を生成することが『 ノーマライゼーション 』です。

 

2. 『 ADL 』と『 QOL 』

食事、排泄、着脱衣、入浴、移動、寝起きなどの日常生活動作、高齢者の身体活動能力や障害の程度をはかる上で重要な指標の一を『 ADL 』 Activities of Daily Living と言います。 また、買い物、洗濯、電話、薬の管理、金銭管理、趣味活動など日常生活上の複雑な動作のことを『 IADL 』手段的日常生活動作 Instrumental Activity of Daily Living と呼びます。

高齢者が生活する中で、日々のADLが確立できたとしても、生活の質が良くなければ意味がありません。 逆に寝たきりの生活になってしまっている方は、日常生活動作は困難であるものの本人の意思を尊重した介護、サービスが施されていれば、生活の質は高いと言えるのではないかと思います。 その生活の質 、生命の質 の事を『 QOL 』 Quality of life と呼び、身体が不自由な方の身体的な苦痛を取り除くだけでなく、精神的、社会的活動を含めた総合的な活力、生きがい、満足度を指しています。

『 QOL 』と『 ADL 』どちらも劣っていてもいけませんし、どちらか秀でていても生活のバランスが取れているとは言えません。QOL、 ADL、IADLはとても密接な関係にあり理美容、整容も全ての自立支援、維持向上のお役に立てるものだと思います。

 

3.  高齢者の行動・心理、一般的な理解

高齢者の知的生活( 新しい知識を理解し覚えたり、文字を読んだり書いたりする生活 )では、多くの場合、一般的に低下するという事が定説でしたが、近年では知的生活の衰えには個人差が大きくみられるようになり、反復学習や訓練によって知的生活の促進も進められています。  例えば、健康な高齢者においては知的生活は中年期と同じように十分であることも多く、逆に心身ともに病んでいる高齢者の場合は物忘れが急激にひどくなったり通常の生活が困難になったりする事例も少なくありません。 知的生活を左右しやすいのは健康状態で、 脳障がいが生じているたり、病気で死が近づいている場合は当然、知的生活に変化が起こります。 死が近づいているときは知能低下が大きく、これは知能の『 終末低下 』と呼ばれます。 知能水準には当然個人差がありますが、一旦会得された知能がどのように維持されるかは健康状態が最も重要な要因となります。

 

4. 介護支援専門員との連携

介護支援専門員(ケア マネージャー)は、介護を必要とする人と、福祉・医療・保健のサービスとを結ぶ『 架け橋 』となる重要な役割を担っています。 介護を必要とする方に最適なケアプランを立て、サービスの調整を行い、きちんとサービスが実行されているか、あるいは効果が出ているかのチェック( モニタリング )を行なうのがケア マネージャーの仕事です。 介護保険サービスにない理美容サービスですが、在宅のお仕事を積極的に受けるようになるためには、ケアマネージャーからの紹介が主流となり、また施術を行う理美容師も高齢者の身体、疾病への理解を深めることで、ケアマネージャーや介護関係者との連携が取りやすくなると思います。