訪問理美容師が把握しておくべき高齢者の病気・疾患・治療法 ⑤

【 感染する病気 】

病原体がうつる方法は、大きく分けて4パターンあります。

(A) 空気感染 / 飛沫核感染 ( ひまつかく かんせん )

患者さんの咳やくしゃみなどによって空気中に出た『 病原微生物が長時間空気中に漂い 』それを吸い込むことにより感染が成立します。

(B) 飛沫感染 ( ひまつ かんせん )

患者さんが咳やくしゃみをした時のしぶきに含まれる病原微生物を、周囲の人が吸い込むことで感染をします。 この場合、空気感染と異なり、『 しぶきの届く範囲 』に限られ、病原微生物が長時間空気中に漂うことはありません。

(C) 接触感染

患者さんの皮膚や粘膜に直接接触することで感染をします。

(D) 経口感染 ( けいこう かんせん )

病原微生物によって汚染された水や食品を介して感染をしたり、患者さんの排便処理の後の手洗いの不備などで身の周りのものから感染をすることもあります。

 

① 結核

(A) 空気感染

結核は結核菌による慢性感染症で抵抗力が低下した人では全身感染症となります。

症状は呼吸器症状( 痰と咳、時に血痰・喀血 )と全身症状( 発熱、寝汗、倦怠感、体重減少 )が見られます。 咳と痰が2週間以上ある場合は要注意です。

 

② レジオネラ症

(A) 空気感染

衛生管理が不十分な循環式の浴槽設備から起こる感染症で、抵抗力の弱い高齢者が発症します。 原因はほこりなどと一緒に体に付着したレジオネラ属菌が浴槽の湯を汚染し、浴槽から発生したエアロゾル( 湯けむり・水蒸気 )を吸い込んでしまうと感染します。

 

(C)インフルエンザ

(B) 飛沫感染

高齢者が気をつけたいインフルエンザの合併症には、 肺炎、 気管支炎など、主に気道の炎症によるものが挙げられ高齢になればなるほど肺炎で亡くなる確率が高くなります。 万が一インフルエンザにかかってしまったら、こうした合併症( 二次感染 )へ移行しないよう注意が必要です。

 

④ 肺炎球菌感染症

(B) 飛沫感染

肺炎球菌は、主に気道の分泌物に含まれ、唾液などを通じて飛沫感染します。 高齢者の約3~5%の人が鼻や喉の奥に菌が常在しているとされ、何らかのきっかけで進展することで、気管支炎、肺炎、副鼻腔炎、中耳炎、髄膜炎などの重い合併症を起こす可能性があります。

 

⑤ ノロウイルス感染症

(A) 空気感染 (B) 飛沫感染 (C) 接触感染 (D) 経口感染

ほとんどの場合が経口感染で、主に汚染された貝類を生あるいは十分加熱調理しないで食べた場合に感染します。 また、高齢者の便・吐しゃ物に触れた手指から二次感染を起こす場合が多いため、処理には注意が必要です。 症状は、吐き気、腹痛、下痢で通常は1~2日続いた後治癒します

 

⑥ 腸管出血性大腸菌感染症

(C)接触感染 (D)経口感染 

大腸菌の一種で『 ベロ毒素 』という毒素が被害を起こします。 主に加熱不足の肉、生野菜などの食品、水を介して感染、若しくは、感染者の便を直接あるいは間接的に口にすることで感染することがあります。  症状は激しい腹痛、水様性の下痢、血便などを引き起こします。

 

⑦ MRSA ( メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 )

(A) 空気感染 (B) 飛沫感染 (C) 接触感染 (D) 経口感染

MRSAはそこら中に生息する常在菌で、健康な人の鼻や口にもみられる菌です。健常者は感染いたしません。 発病すると肺炎、敗血症、尿路感染症や菌血症などを引き起こします。 抗生物質が効かないという問題点があるので、免疫機能が低下した方が感染すると死亡率が高いのが特徴です。( バンコマイシン )

 

⑧ 緑膿菌感染症 ( りょくのうきん かんせんしょう )

(C) 接触感染 (D) 経口感染

緑膿菌はあらゆる自然環境に存在している常在菌です。 この菌が創部に感染した場合、膿が緑色になるため、『 緑膿菌 』という名前が付けられています。 成人だと約15%が腸内、口腔内に常在しており、毒性が低いため健常者は感染することはありませんが、免疫力が極端に低下している場合は感染して様々な症状を引き起こします。 呼吸・消化器感染、菌血症( 敗血症 )、尿路感染症、褥瘡( 床ずれ )や手術創部への感染などがあります。

 

⑨ 疥 癬( かいせん )

(C) 接触感染

疥癬は,ダニの一種であるヒゼンダニが皮膚に寄生することで発生する皮膚病で、腹部、胸部、大腿内側などに激しいかゆみを伴う感染症で、直接的な接触感染の他に衣類やリネン類などから間接的に感染する例もあります。

疥癬は皮膚から離れると比較的短時間で死滅します。 また、熱に弱く50℃以上10 分間の過熱で死滅します。