訪問理美容師が把握しておくべき高齢者の病気・疾患・治療法 ①

【 脳の病気 】

1. 認知症

認知症とは知的機能全般が『 脳の病気 』によって著しく低下した状態のことを指します。 認知症には様々な種類があり、疾病原因からいくつかに分類されています。

① アルツハイマー型 認知症

・   世界的に最も多い神経変性疾患で、40~90歳の間に発症することが多く、症状が軽度の時期からでも診断ができるのですが、原因不明の病のため治療する方法は今のところまだありません。

・   脳には、茶色いシミのようなもの( 老人斑 )が比較的早い段階から確認できることが多く、進行すると脳神経細胞が活動できなくなります。

・   初期の記憶障害から症状の進行に伴って身体機能が低下し( 運動麻痺・歩行障害・失禁症状 )、身体全体の機能が衰える可能性があり、合併症である呼吸器合併症などの疾病によって、最終的に死に至ることもあります。

② 脳血管性 認知症

・   脳梗塞や脳出血などの突然の脳血管障害をきっかけに急激に発症したり、小さな脳梗塞を繰り返して起こしているうちに徐々に現れる場合があります。

・   意欲の低下、めまい、麻痺、知覚障害、パーキンソン病などの神経症状、感情失禁( 涙もろくなるなど )、言語障害などの症状が起こる

③ レビー小体型 認知症

・   脳内の脳幹や大脳皮質に、レビー小体という異常な細胞内蓄積が起きることが原因で、早い段階で診断を確定することができれば、治療効果も期待できます。

・   老年期に発症し、男性は女性の約2倍の発症率があります。

・   もの忘れ、幻視( 虫や動物が動きまわるなど )があり症状の変動が大きく、パーキンソン症状( 歩きにくい、転びやすい、動きが遅い、手が不器用など )と似た症状も出ることがあります。

④ 前頭側頭葉型 認知症( ピック病 )

・   脳の前の方にある前頭葉と側頭葉を中心に萎縮が起こるために発症する認知症です。 発症するケースは非常に少なく、精神病やうつ病などの病気と診断されてしまうこともあるようです。

・   抑制や感情のコントロールができなくなり、自己中心的な人格に変わってしまったりと反社会的な人に様変わりしてしまったりすることや言語障害などの症状が現われることもあります。

⑤ 若年性 認知症

・   18歳以上、65歳未満で認知症の症状が発症している場合の総称で原因が分かっているものと、原因が分からないものがあります。

・   40代の患者の場合は老年性のものに比べて病気の進行が早く2倍のスピードで進行してしまいます。

・   事故などの頭部に強い衝撃を受けた後遺症の影響などもあります。

 

 

2. 脳卒中

① 脳梗塞( のうこうそく )

脳の血管が詰まるタイプで脳卒中死亡の60%以上を占めます。

(1) 脳の太い血管の内側にドロドロのコレステロールの固まりができ、そこに血小板が集まって動脈をふさぐ『 アテローム血栓性梗塞 』

(2) 脳の細い血管に動脈硬化が起こり、詰まってしまう『 ラクナ梗塞 』

(3) 心臓にできた血栓が流れてきて血管をふさぐ『 心原性脳塞栓症 』

② 脳出血

脳の中の細い血管が破れて出血し神経細胞が死んでしまうタイプで、脳卒中死亡の約25%を占めます。  高血圧や、年をとって脳の血管が弱くなり、血管が破れることが原因となる場合が多く、日中活動しているときに、頭痛やめまい、半身マヒ、意識障害などが起こります。

③ くも膜下出血

脳をおおっている3層の膜( 軟膜、くも膜、硬膜 )のうち、くも膜と軟膜のあいだにある動脈瘤( どうみゃくりゅう )が破れたり、動静脈の奇形が原因で出血膜と膜の間にあふれた血液が脳全体を圧迫し突然激しい頭痛、嘔吐、けいれんなどが起こり、意識がなくなり急死することもある。 脳卒中死亡の10%強。

 

 

3. パーキンソン病

脳は、大脳、小脳、脳幹に大別され、脳幹に属する中脳の黒質( こくしつ )という部分と、大脳の大脳基底核( だいのう きていかく )にある線条体( せんじょうたい )という部分に異常が起こっていることが明らかなっています。   脳では、神経細胞のネットワークがさまざまな情報伝達を行い、体全体のバランスを保ち、生命を維持するように働いていて、神経細胞同士の情報伝達には、『 ドパミン ・ セロトニン・アセチルコリン 』 といわれる神経伝達物質が欠かせません。 パーキンソン病は、作られるドパミンの量が正常な人の20%以下まで低下すると症状が現れるといわれています。 発症した場合、姿勢の維持や運動の速度調節がうまく行えなくなるなど、パーキンソン病特有の症状が現れると考えられています。